May 2006 Pangaea Newsletter

-INDEX-

・06年4月の活動概況
・理事長便り
・技術便り
・パンゲアリング(パンゲアンからのメッセージ)
  今月は、コアスタッフとしてパンゲアネットの開発に携わった伊藤康太郎さんです。
・お知らせ:パンゲアパッケージ、ついにリリース!

06年4月の活動概況

4月10日 月曜日 京都R&Dセンター始動

先月号でもお知らせしましたが、パンゲアのR&Dセンターが京都・四条烏丸のCOCON烏丸(ココンからすま)内にオープンしました。研究機関やNPOの集まる『異文化コラボレーションセンター』の一員として、パンゲアの新たなフェーズが始まります。COCON烏丸は地下鉄烏丸線・四条駅の真上。繁華街も近くとてもいいロケーションです。こちらには副理事の高崎はじめ、3名のスタッフが常駐しておりますので、近くにお寄りの際は気軽にお立ち寄りください。

4月17日 月曜日 異文化コラボレーションセンターキックオフ

パンゲアスタートを機にCOCON烏丸内の異文化コラボレーションセンターのメンバーが一同に介し、互いの活動をプレゼンテーションするとともに懇親会を開きました。懇親会の幹事はパンゲア。『まきまきパーティ』なる不思議なタイトルにみなさん何事が始まるのかと興味津々。手巻き寿司、プルコギ、トルティーヤなど世界の“巻きモノ”を取り揃えた手作り料理がずらりと会場に並びました。グァカモーレ、チキン、色とりどりのお野菜など、とにかく何でも巻いて巻いて。。。最初は戸惑っていた参加者のみなさんも最後にはすっかり打ち解けて、これから同じオフィス内で過ごす仲間として、お互いを知るよい機会になりました。

4月22日 土曜日 読売新聞『週刊KODOMO新聞』にパンゲア掲載

読売新聞土曜の夕刊『週刊KODOMO新聞』の1コーナー『世の中探検隊』の中でパンゲアの絵文字について取り上げていただきました。渋谷区を通じて広尾中学のパンゲアン3名が取材に応じてくれました。目を輝かせて記者の方の質問に答える3人の姿は頼もしく、みんな自分なりにパンゲアの活動を解釈し、自分の中に取り込んでいるようです。記事の中では、海外のこども達との絵文字を使ったコミュニケーションについて、「国の違いもわかったし、自分の世界が広がった。もっといろんな国の人とやってみたい」そんな彼らのコメントが楽しそうな写真と共に掲載されています。機会を与えて下さった読売新聞社会部・森さんにこの場を借りてお礼申し上げます。

4月26日 水曜日 渋谷アクティビティ振り返り報告会

04年5月から渋谷区でスタートしたパンゲアアクティビティの2年間の活動の成果について、共に活動を見守ってくださった渋谷ファンインのみなさんへの報告会が開かれました。報告会ではこれまでの活動に対する感想やご意見とともに、今後の活動に対するアドバイスなどもたくさんいただくことができました。ただこども達を見守るのではなく、大人もつい夢中になって参加してしまう場所だったこと、そしてだからこそこども達が安心して過ごせる場所にもなったこと。地域のこども達ひとりひとりの事情をよくご存知のファンインのみなさんだからこそのご意見は、「地域の視点に立つ」ことの重要性を改めて認識させられるものでした。そしてこども達が新年度の活動再開を心待ちにしてくれているというお話は何よりも嬉しいもの。私達もみんなに会える日をとても楽しみにしています。

理事長便り パンゲア理事長:森

3月末に怒涛のごとく迫る締め切りの波。そして京都R&Dセンター開設準備を経て京都の四条烏丸、駅の真上にやってきました。花見で賑わう京都の街を尻目にパンゲアのスタッフは引越しに追われていました。

京都に常駐することになる高崎、と高見澤の2人は引越し代節約のために東京から2トントラックを運転してやってきました。オフィスも机や本棚で埋まり、詰め込みすぎのオフィスは高床式住居?なんて笑われましたが、今はすっかり片付けも終わり落ち着いています。

17日にはCOCON烏丸の『異文化コラボレーションセンター』のキックオフパーティがありました。手づくり懇親会の幹事をおおせつかってしまったパンゲアのために、東京のスタッフやボランティアの人たちが深夜バスなどに乗って準備に駆けつけてくれました。その名も『まきまきパーティー』。世界のいろいろな巻き物料理を自分で作る!という変なものを企画した私の後ろでみんなが一生懸命ボールを拾ってくれていました。ありがとう。おかげで前からやりたかった企画を皆様の会費でちゃかり実現できちゃいました。70人分のレタスやトマトなどの大量の野菜をひたすら切るはめになった稲葉とまりちゃんは、「飼育係になった気分」。準備はたいへんだったけれど、好きなものを巻いて、「何巻いた?」などと知らない人同士が話すきっかけになっていたのは大成功です。京大の偉い先生が必死で大トロ風味のまき寿司の作り方を教えてくださったし、オフィスでお隣さんになる京都ラジオカフェの方ともすごく楽しい話ができました。食べ物はみんなをつなぐ。これは私の持論です。

一方で今月、ほしかった助成金が外れました。(くじみたいなものと思っています)正直、目の前がどよーんとなってしまいました。でも最後のひとつがあたりました。額は小さいけれど、きっとこれにも意味がある。今のパンゲアはたくさんの予算が急についてもまだまだうまく使えないところあるから、まあこれぐらいでもう一年修行だ!と言われた気がします。「もうだめだ。」と思うことも多いけれど、いつも最後はどうにかなる。そしてまたまっしぐらに進む。曲がることなく、弱まることなく。そんな中でパンゲアネットが完成しています。今日、開発担当の康太郎からメールが来た。悩みながら、時には怒り、でも最後は笑顔。人との出会いが私の宝です。パンゲアやっていていろいろな人に出会えた。感謝!

森 由美子

技術便り パンゲア副理事長:高崎

今月はまず京都の引越しから。私と高見澤は東京で2トントラックを借りて、東京から京都までやってきました。途中、名古屋付近で遭遇した雷雨にもマケズ無事に荷物の運び込みは終了。久し振りのマニュアル車でしかもはじめてのトラックの運転ということで、かなり手に汗を握り締めての運転でしたが事故もなく、予定時間にクルマを返すこともできました。東京と京都で、積み下ろしを手伝ってくださったボランティアのみなさん。本当にありがとうございました m(_ _)m

パンゲアのR&Dセンターは、2004年度後期に採択されたIPA未踏ソフトウェア創造事業で私のプロジェクトマネージャーをして頂いた京都大学情報学研究科の石田亨教授とのご縁によるものです。  石田教授は、総務省系の独立行政法人であるNICT(情報通信研究機構)で「言語グリッドプロジェクト:http://langrid.nict.go.jp/indexj.htm」というプロジェクトをこの4月からスタートされました。これは、インターネット上にある世界中の電子辞書や機械翻訳といった言語資源・言語処理機能をつなぎ、世界規模のインターネット言語インフラを作ろう、という研究開発プロジェクトです。これまでの研究所や大学などは「産官学」連携というのがキーワードだったのですが、言語グリッドプロジェクトでは「産官学民」としてNPOや市民などを含めた「民」も参加できる研究開発活動なのです。  パンゲアは、言語グリッドのシステムを使っていくユーザー(利用者)としての立場、言語資源という観点から見たパンゲア絵文字:ピクトンに関して一緒に研究開発をやっていくコラボレーター(協力者)という立場、ピクトンのナレッジベースを提供するコントリビューター(貢献者)という立場、の3つの立場から関わらせて頂く予定で、日々NICTの研究者らとプロジェクトを具体化しています。

そして京都に来てからまだ1ヶ月ほどですが、既にボランティアの方々が沢山集まってきてくれています。昨日はゴールデンウィークの真っ只中であるにもかかわらず、朝から夜までパンゲアのオフィスはボランティアの方々で満員御礼!彼らのサポートを得て、パンゲアパッケージの完成に向け、マニュアルの翻訳、レイアウト、そしてパンゲアネットのテスト・最終調整などの作業にラストスパートがかかっています。そしてこの5月中旬から6月上旬にかけこのパッケージを手に、ソウル、ウィーン、ナイロビを再びまわり、パンゲアネットが世界で始動します!

最後になりますが、この1年間コアスタッフとして技術開発をやってきてくれた伊藤クンがパンゲアを離れます。技術ボランティアだった彼が去年の春先、大学卒業を機にきっぱりと決意した表情で「パンゲアで1年間頑張りたい!」そう言ってくれた時は本当に嬉しかった。そして彼の活躍のおかげで素晴らしいパンゲアネットが完成しました。この1年間コアスタッフとして働いて、すっごく色々な面で成長したなぁとしみじみ思います。お互い切磋琢磨して、私も彼からとても多くのことを学ばせてもらえたことをとても感謝しています。次のステップでもがんばってほしいし、落ち着いたらまた技術ボランティアとして再会できる日を楽しみにしてます。こーたろー、本当にお疲れ様でした!

高崎俊之

パンゲアリング パンゲアネット開発担当:伊藤康太郎さん

はじめまして。
パンゲアで開発を担当しました伊藤康太郎です。

大学で副理事長の高崎さんに出会ったことをきっかけにパンゲアを知り、2005年4月からフルタイムの開発スタッフとして働いていました。濃密な1年でしたが、中でもパンゲアネットプロジェクトでは得難い経験をすることができました。

最も楽しかったのは森さんとデザイナーの高見澤くんと3人でパンゲアネットの構想を練っていた時でした。3人それぞれが得意な分野を担当して議論を進めることによって、どんどんイメージが鮮明になっていく感覚。1+1+1が3以上の価値を生む感覚。これぞ開発の醍醐味だという経験ができたことは自分にとって大きな財産です。

 一方、最も苦労したのは構想をいかに実際の形に落とし込むかというところでした。パンゲアネットを利用するユーザが出会い・伝えあい・つながるための機能・デザインはどうあるべきか、時にはケンカになりそうなほどの激論を3、4時間することもありました。ただ、その根底にあったのは「自分の気持ちをあの国の子に伝えたい」、「世界中のたくさんの友達と仲良くなれて嬉しい」という体験をこども達にしてもらいたいという想いであり、それを開発チームはシェアしていたからこそ苦しい時期を乗り越えられたと思っています。

 パンゲアネットのリリースにより、いよいよ世界中のパンゲア参加者同士でいつでも自由にコミュニケーションができるようになります。韓国のこどもがケニアのこどもにピクトンメッセージを書く。オーストリアのこどもが日本のこども家に遊びに行く。そんなシーンを想像するだけでワクワクしてきます。今後のパンゲアが非常に楽しみです。

 最後になりますが、パンゲアネット開発にあたっては多くの方々にお世話になりました。日夜多くの時間を共にした開発チームの高崎さん、上野さん、高見澤さん、池田さん。アクティビティの観点からアドバイスをいただいた森さん、向井さん、花田さん、山崎さん。寺崎さん、篠原さん、渡辺さん、柴田さん、稲葉さんからは大変貴重な専門的アドバイスをいただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

伊藤康太郎

お知らせ:パンゲアパッケージ、ついにリリース!

これまでニュースレターの中で、「パッケージ化」「アクティビティ」「パンゲアネット」などの言葉が飛び交っていたことに、「それって何?どんなもの?これまでやっていた活動とは違うの?」となどと疑問をもたれていた方も多いと思います。パンゲアは世界のこども達がインターネットを通じて楽しみながら出会い、つながり、伝えあうことができる「ユニバーサルプレイグラウンド」づくりを目指していますが、そのユニバーサルプレイグラウンドは「パンゲアネット」「同期・非同期のアクティビティ」によって構成されるものです。そしてパンゲアネットの使い方や、スムーズなアクティビティの企画・運営技術サポートなどのすべてをマニュアル化したものが「パンゲアパッケージ」です。このパッケージを活用することにより、あらゆる地域で、大人とこどもが独自にパンゲアの活動に参加できるようになり、より多くのこども達が出会い、つながり、伝えあう環境が整うものと私たちは考えています。

 そしていよいよこの5月中旬、ソウルでのアクティビティを皮切りに、パンゲアネットが世界でスタートします!今回はパンゲアネットとパッケージの内容を簡単にご紹介したいと思います。

 核となるパンゲアネットはパンゲアに来たこどもだけが参加できるクローズドなコミュニティサイトです。各地の児童館、ミュージアム、学校の課外活動などでアクティビティに参加してもらうことが登録の条件になります。参加者はアクティビティでえんぴつやクレヨンを使って描いた自分オリジナルの家をパンゲアネット上に持ち、この家を基点に世界の様々な場所に出かけて遊ぶことができます。家、村、国、地球。地球まで4クリック!がコンセプトです。こども達は自分の家から村、国を通って、世界のいろんな国のこども達の家にアクセスしてメッセージを残せます。

例えば、、、
 ・ケニアの友達の家に行き、「君の好きなものはなあに?」などのピクトンメッセージを書いて
  ポストに入れる。
 ・パンゲアム(作品が投稿できるミュージアム)に行き、自分のお気に入りの作品を投稿した
  子を探し出して「君の作品、とっても好き!」というメッセージを送る。
 ・仲良くなりたい友達とは、招待状を交換してお互いの部屋の中まで遊びに行くことができる
  ようになる。

 このように楽しみながら徐々にコミュニケーションを深められるようパンゲアネットはデザインされています。パンゲアハウス自体にもさまざまな仕掛けが組み込まれています。うれしい、悲しい、好きな表情などその日の気分で変えられる自分の写真や、母国語で書かれた表札とその読み方を自分の声で伝えることができるアイコン、部屋の中には自分のお気に入りの作品をストックできる宝箱など、ここですべては紹介で切れないくらい盛りだくさんです。開発を進める上でも「もっと相手のことを知りたい」「自分の気持ちを伝えたい」「世界中のたくさんの友達と仲良くなれて嬉しい」。そんな体験をしてもらうためには何が必要か、そうしたことを中心に考えました。

 そして、こうしたネット上でこども達が楽しむことのできるコミュニケーションは、アクティビティへの参加と一体となっています。リアルなスペースで友達と一緒に活動することは、コミュニケーション欲求をサポートしてくれます。パンゲアムに投稿する作品のアイデアを出し合ったり、ピクトンメッセージを一緒に考えたり。。。。時には拠点同士の同期アクティビティでお互い顔を合わせることもできたりもします。こうして楽しい世界はどんどん拡がってゆきます。

 パッケージの中のマニュアルでは、こうした活動をサポートする大人たちがスムーズにアクティビティを進めていくことができるよう、会場の設営からファシリテーションの仕方、パンゲアハウスの描き方、画像の取り込みや各種素材のアップロードの方法などを、パソコンが苦手だという方でも簡単に運営ができるよう、事細かに紹介しています。その他活動に必要な記録シートやフォーマットも完備されています。

 ニュースレターやホームページ上ではパッケージの全容について詳細にご紹介できないのが残念ですが、ご興味のある方には事務局にご連絡をいただければ、プレゼンテーションの機会をご用意させていただきます。どうぞみなさまお気軽に事務局までご連絡ください。

連絡先::E-mail: info*pangaean.org(「*」を「@」に変えてください)(担当・花田武和)