2004年10月

-INDEX-

・NHK『おはよう日本』への反響に寄せて  
・今月のつながりアクティビティ:「パンゲア@渋谷」  
・研究室から:第3回『パンゲア・サロン』開催    
・今月のパンゲアフェロー「渋谷技術担当・稲葉利江子さん」
・パンゲア日記(編集後記)

■■ NHK『おはよう日本』への反響に寄せて ━━━━━━━━━━
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 去る9月12日(日)、パンゲアの絵文字メール開発に関わる活動の様子がNHKの朝のニュース番組『おはよう日本』の特集で紹介されました。また、翌週の17日には朝日新聞朝刊のコラム『ひと』にて代表の森由美子が取り上げられ、その後、たいへん多くの方からご賛同のメールをお寄せいただき、事務局では嬉しい悲鳴をあげています。

 皆さんからは、報道内容に関する感想、今後の技術開発やプロジェクト推進についての具体的なアドバイスなど、どれも貴重なご意見ばかり。子どもの国際交流、ITなどとも異なる分野の方からもご意見をいただけたことは本当に驚きです。
 私たちがこの絵文字で目指したいのは、異文化に暮らす子ども同士がお互いの言語を知らなくても想いを伝え合い、つながりあってもらえる環境づくり。ですが今回寄せられた反響の中には、この絵文字が子どもに限らず、言葉を話すことが苦手な人、障害によってそれが困難な方々のコミュニケーション手段としても有効なのではないか、というような示唆もいただいています。
 メンバー一同、改めてこの取り組みの重要さに気づかされ、まずは子どもたちにこれを自由に使ってもらえる環境を整えるべく邁進したいと思っております。これからもパンゲアをよろしくお願いします。


■■ 今月のつながりアクティビティ ━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━ 「パンゲア@渋谷」 ■■━━━━━━━━━━━━━━━★

 年間を通じて行われる渋谷のつながりアクティビティでは、5月のスタートから9月までの間、ネットワークを通じて子どもたちが出会い、お互いを伝え合うための手段として「パンゲアTV・クイズなにこれ」の問題作りにいそしんできた。お互いの生活の中で身近な題材を使い、ぐるぐる・うにょーん・こまパラ・ラクがおという4種類のクイズを、ローカルな環境で編成されたグループで作り、TV番組に見立てたネットワーク対戦ゲームで問題を出し合う。
その本番の日がいよいよやってきた。
 クイズの種類についてはVOL.3で簡単にお伝えしたが、ここでもう一度おさらいを。
 ぐるぐる・うにょーんは、各学校の身近なものをデジカメで撮影し、そこに画像加工を行った。「ぐるぐる」では、渦巻きになった写真が徐々に元の写真に戻っていくなかでどれだけ早く正解を出せるかを競う。
 「コマパラ」は4枚の組写真から連想する答えを当て合う。「ラクがお」は落書きされた有名人写真から、4段階で落書きを少しづつ取り去り、写真の人物が誰かを当てるというものだ。
 ぐるぐる・うにょーんは1問30点。30秒以内で回答する間に点数は徐々に減っていく。こまパラ・ラクがおではクイズの難易度によって40点~10点問題に振り分けし、パネルクイズの要領で答えてもらう。さらにこのクイズでは正解すると得点が2倍になる「チャンスカード」で逆転のチャンスを狙えるようにしたりと、子どもたちが最後まで対戦を楽しんでもらえるようプログラムを組み立てた。優勝校にはオリジナルの表彰状が送られるが、それぞれが作ったクイズを子どもたち自身がほめあうことを目的として「あっぱれ賞」を設け、クイズを作ったグループの一人ひとりが表彰される仕組みも盛り込んだ。
 技術開発の面では、TV番組さながらに、刻一刻と減っていく点数表示板、パネルからクイズがポップアップするシカケなど、ビジュアル面で子どもたちを刺激するよう心がけた。
 そしていよいよ本番、想像以上に子どもたちはクイズ対戦を楽しみにしていて、「今日は絶対に勝つぞー!!!」とやる気満々で教室に入ってくる子も。
クイズが始まると皆画面に釘付けで、ぐるぐる・うにょーんの回答の早さには大人たちも下を巻いた。楽しいことに対する子どもの集中力と、写真のごく一部分から全体像を類推できる感覚の鋭さには本当に驚かされた。
 しかしこまパラ・ラクがおではやや子どもたちは苦戦してしまったようだ。例えば代々木小では、鳩森小の「蚊取り線香」のヒント、「ブタ(のイラスト」「夏の夜空の絵」「緑色の渦巻きの写真」に大いに戸惑った。「蚊取り線香がなんでブタなのかぜんぜんわかんない!」。クイズを作った子は当然、夏の風物詩とも言える、口を開けたブタの形をした線香たてをイメージしているのだけれど、代々木でわからないと言った子は「そんなの見たことがない!ずるい!」と怒り出してしまった。こうしたヒントのわからなさに対する不満は鳩森側でも表出していてその日のアクティビティの最後まで怒りをあらわにしていた子も少なくなかった。大人たちは当初、相手のヒントを子どもたちが素直に受け入れ、自分たちが知らなかったことを素直に認め合ってもらうことを意図していたのだが、「勝負」に熱中するあまり、子どもたちにはその大切さを伝えきれていなかったことが、本番を実施してみて明らかになった。この点は前半のアクティビティの最大の反省点としてあげられる。
 また、こうしたクイズ本番で起きた現象によって、学校同士の対戦という認識が先攻してしまい、相手校の個人に対する興味が喚起されたかどうかについてはまだ不十分なのではないか、との見解もでた。
 後半で行う予定。メディア・アクティビティでは、もう一度その個人レベルの興味をいかにして喚起し、お互いを「知り合うこと」に結び付けていくのかが大きな課題となってくるだろう。 


■■ 研究室から ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━ 『第3回パンゲア・サロン』開催 ■■━━━━━━━━━━━━★

「パンゲア・サロン」では「ネット社会におけるつながりとは」をメインテーマに年6回の研究会を予定。毎回2部構成にて開催し、第1部では、渋谷区で行っている“つながりアクティビティ”の報告を、第2部では研究会メンバーがそれぞれの関心領域から、年間テーマにつながる内容のトークセッションを行い、より具体的に“つながり”の定義やあり方について考えて行きます。
 第3回目は10月20日(水)。第2部のトークセッションでは、「見えるつながり、見えないつながり」~最近接領域の発見手法を探る~がテーマです。
 人と人との間には、もともとそこに在るにも関わらず、目には見えない情報のつながりが存在しています。こういったつながりは、誰かには見えているが、他の人には見えないという場合が多い。他人には見えるが、自分には見えない<最近接領域>を発見するには、どういった手法・環境が考えられるのかについて考察します。

【研究会:パンゲア・サロン】

●と  き:2004年10月20(月)18:30~21:00(受付開始18:00)
●会  場:丸ビル7F・東京21Cクラブ(東京駅丸の内側)

●プログラム
 ・第1部:つながり・アクティビティ ~渋谷からの報告~
 ・第2部:見えるつながり、見えないつながり
      ~最近接領域の発見の手法を探る

 <ゲストスピーカー>
  今泉 洋 教授
  1951年生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒。在学中より雑誌ライターとして音楽評論などを行う。81年株式会社アスキーに入社。ニューヨーク駐在員、雑誌創刊企画、ハイテクラボ、海外書籍編集、パソコン通信サービス「アスキーネット」運営、インタラクティブソフト事業部などを経て93年にコンサルタントとして独立。家電、情報機器メーカーの研究所などで情報関連分野の研究プロジェクト、新製品開発に参画。99年4月、武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科創設とともに着任、現在に至る。

 <コーディネーター(パンゲア専任研究員)>
  前田邦宏
  1967年生まれ。株式会社ユニークアイディ代表取締役。90年頃よりデジタルコンテンツの企画制作に携わり、CD-ROM等の企画制作を行う。94年からインターネット向けコンテンツの企画制作に従事。02年2月にコミュニティ・システム「関心空間」をリリース。グッドデザイン賞・新領域デザイン部門受賞。法政大学工学部システムデザイン学科・兼任講師。横浜美術短期大学非常勤講師。
  
  関心空間 INDEX
  http://www.kanshin.jp/

 <スピーカー(パンゲア専任研究員)>
 ・渡辺保史(智財創造ラボ・シニアフェロー/パンゲア・フェロー)
 ・朝川哲司(NPO法人パンゲア理事/アクティビティ実施担当)
 ・篠原稔和(ャVオメディア株式会社代表取締役/パンゲア・フェロー)

  ※一般のご参加はご案内しておりません。


■■ 今月のパンゲアフェロー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━ 「(独)メディア教育開発センター・稲葉利江子さん」 ■■━━━★

 はじめまして。渋谷アクティビティで技術を担当しています稲葉利江子です。
アクティビティの現場で子どもたちが使うコンピュータやその周辺の環境を整えたり、使い方をサポートするのが私の役目です。
 パンゲアのことは約1年ほど前、教育関係のフォーラムで知りました。その意義と活動に興味をもち、すぐに、インターネットで調べ、思わず問い合わせをしていました。新たな“つながり”を求めていた私にとって、パンゲアはとても魅力的だったのです。
 渋谷のアクティビティでは、実際に子供たちと接し、自分が忘れていた子供時代の社会というものをみることができ、新たな発見がたくさんあります。また、はじめてのアクティビティの私を温かに迎えてくださった、多くのファシリテーターの皆さん。私にとって、自分を振り返られるオアシスのような空間です。
 しかし残念ながら、この9月からMITに半年、ヨーロッパに2ヶ月、ITを利用した高等教育の研究のため日本を離れることになりました。直接、アクティビティに参加することができなくなりましたが、違った形で、ボストンからそして、ヨーロッパから参加させていただきたいと思います。遠く離れていても、心はひとつ。「パンゲア!!」を合言葉にできる限り、参加させていただきます!!(ボストンにて)

 学生の頃は「顔認識」の研究をされていたという稲葉さん。なかでも犯罪捜査の犯人探しに応用するための技術を学んでいたというのは驚きです。現在は高等教育の教材やその素材を国際的にシェアし、再利用できるようにする取り組みがお仕事ですが、もし違う道を選んでいたら、“秘密の機関”で“特別な”お仕事をなさっていたのかもしれませんね。(サスペンス映画のヒロインみたいに?!)
 アクティビティの現場では根気よく子どもたちにインターネット上でクイズの素材探しに付き合ってくださっていたのが印象的でした。
 9月の半ば過ぎにボストンへ渡られて、あちらでの新生活が始まったばかり。
朝夕の温度差が激しい気候でここ数日はちょっと風邪気味だそうですが、どうか身体に気をつけて、来年の帰国までお仕事もプライベートも思い切り、楽しんできてくださいね。

■■ パンゲア日記(編集後記) ■■━━━━━━━━━━━━━━━━★

●デスクから:山崎麻里子
 毎月渋谷で子どもたちに接していて困ってしまうことがたまにあります。それは彼らの「まっすぐな」質問。ある時代々木小の女の子が私のケータイストラップをみて「これなあに?」と話しかけてきました。それはドリームキャッチャーというネイティブ・アメリカンのお守りなのですが、革で編まれた円の中央に鹿の腱でできた網がクモの巣のように張られているものです。言い伝えによると、ここに悪夢を絡めとって朝日と共に消滅させてくれるというものなので、そんな話をかいつまんでしてあげたところ、目を輝かせた彼女の口から出た言葉は「ほんと?!じゃあやってみせて!!」。大人には毒舌で通っている私もさすがにしどろもどろに。「えーっとね、これはね、おまじないのようなもんだからそのー、見せるとかそういうもんでなくて、むにゃむにゃ。。。」子どもと話すのって楽しいけど、時々ちょっとだけ、むずかしいですね。

●編集長から:小西喜朗
 いまの子供たちも「かくれんぼ」をして遊ぶのだろうか。よく近所の神社や集会所のなかで遊んだ記憶がよみがえってくる。東京に暮らして20年以上になるけれど、「かくれんぼ」をして遊ぶ子どもたちを私はみたことがない。子どもたちが集まって、「かくれんぼ」をできるような公共の場もないのではないだろうか。「そんなことをすると危ない・・」とか、注意も出てきそうだ。
「かくれんぼ」では、鬼役の子どもと隠れる子どもが、「もーいいかい、まーだだよ」と声をかけあいながら始まる。相手の存在を声で確認した後、姿が見えなくなった相手を捜しだす。細かなルールを決めるわけではないが、絶対に見つからないような場所に隠れることはないし、その場から遠く離れてしまうこともない。ここにゲームの距離感が自ずと存在し、互いの暗黙知になっている。いくら探しても見つからない場所に隠れてしまうとゲームは成立しないから、ルール破りは仲間の機嫌をそこなってしまう・・・。
 今回の渋谷でのクイズ対戦は、こうした「かくれんぼ」と同じ要素がある。
がしかし、相手のクイズへの怒りが出てしまった。「かくれんぼ」との違いは何なのだろう。ここにいろいろなヒントがありそうだ。


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詳細については、パンゲアのホームページhttp://www.pangaean.org/をご覧下さい。

このメールは、
*ホームページよりパンゲア活動協力会員にご登録いただいた方
*パンゲアアドバイザー、フェロー、ボランティアスタッフとして登録いただいた方
*またパンゲアの活動になんらかの形でご協力いただいている方で理事長・森と副理事長・高崎と名刺交換された方などにお送りしています。

配信解除・配信先変更されたい方は、以下のHPより、お願いします。
http://www.pangaean.org/common/newsletter/change.html

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